「大災害の中にも子どもの笑顔」〜黒柳徹子のハイチ・東北報告〜

「大災害の中にも子どもの笑顔」〜黒柳徹子のハイチ・東北報告〜

ハイチの大地震は2010年1月12日に発生しました。死者は31万人。さらに、復興の途上でコレラの大流行があり5千人が死亡しました。黒柳徹子さん(ユニセフ親善大使)は1995年にハイチを訪問していますから、大被害の中で、子どもたちはどうしているか心を悩ませていました。昨年も、ハイチ訪問を試みましたが、現地の治安や宿泊施設の問題で、断念せざるを得ませんでした。
やっと現地から受け入れ出来るとの連絡が来た矢先に、東日本大震災が起きました。同じ大地震です。東北へとの考えもありましたが、混乱している東北へ行って邪魔になってもいけない、ハイチの子どもたちも待っている、そんな考えから、帰国後に東北を訪問することになりました。


【ハイチの基本情報】

面積 27,750平方キロメートル(北海道の1/3)
人口 992万人(2009年)
首都 ポルトープランス
民族 アフリカ系(約9割)、その他混血
言語 フランス語、クレオール語(共に公用語)
宗教 キリスト教(カトリック、プロテスタント等)、ブードゥー教等
国情 ハイチは「西半球の最貧国」。国民の80%は劣悪な貧困状態。国民の70%近くが農業に従事している。規模が零細、灌漑設備等の農業インフラが不十分で天水に依存した伝統的農法なので、農業生産性は極めて低く、食料自給率は45%。恒常的に食糧不足で、大半を海外からの輸入と援助に大きく依存している。
  MAP


【地震後(訪問時)

(治安の悪化)
ユニセフで示された首都・ポルトープランスの地図は黄色と赤に塗り分けられていました。交通信号と同じ意味を持ち、赤地域は危険度が高く立ち入り禁止、黄色地域は、十分注意して行動する、となっています。街の情景を撮影するにも、ゆっくり三脚を立てて行うことは出来ませんでした。生活が改善しない苛立ち、多数の外国メディアが洪水のようにやって来て取材されたが、自分たちの生活には、なにも役に立っていない、という反感があり、取材に対して協力的ではありませんでした。刑務所も地震で破壊され、多くの囚人が街に逃げ出している、という恐怖もありました。


(復興)

地震から1年半も経っているのに、なにも手つかずでは、と思うほど、復興は進んでいません。建物の構造が脆弱なことから、崩れ落ちた建物は「パンケーキ」と呼ばれました。現在でも70万人が避難生活をしています。
大統領府や国会議事堂は崩れたまま、カテドラル大聖堂も崩れ落ちたまま。街の広場はテントが密集しています。キャンプの数1,060カ所。震災直後が1,200カ所ですから、復興が進んでいないことが分かります。水道や電気などのインフラも整備もまだまだ。街はゴミだらけ。
家を失ったか、家族を失ったか、多くの子どもたちはストリートチルドレンになってビルの陰で寝ています。

首都のスラム 地震で倒壊した大統領府 倒壊したポルトープランス・カテドラル大聖堂


(ジェリコ・キャンプ)

5,700人が暮らす避難民キャンプ。地震が来たとき、出産中で、へその緒がついた子どもを地面に落としたというエピソードに黒柳さんはビックリしました。

避難民キャンプでインタビュー ジェリコ避難民キャンプ(ユニセフ支援) ジェリコ避難民キャンプ(出産中に地震が来てへその緒が付いた子どもを落としたお母さん)


(ヌベール・スルス(新たな泉)初等・中等学校)

私立・無宗教 4階建ての校舎は崩壊し17人が死亡しました。現在、ユニセフの支援により、別な場所へ半永久的な校舎が建てられました。小学生507人、中学生614人が在籍。

黒柳徹子さんが訪問したとき、子どもたちは、地震と津波の被害を受けた日本の子どもたちのために応援メッセージを書いていました。
黄色い太陽のもと、子どもたちが手と手を取り合って、微笑んでいる絵、虹色に塗り分けた文字で短いメッセージを書いたものなど、ハイチの子どもたちが書いたメッセージ・カードは、日本の被災児童たちに向けたもので、心からの同情を示したものでした。色鮮やかな文字で書かれているものもあれば、想像豊かな絵を描いたものもあります。ひとつひとつから「希望」が伝わって来ます。黒柳さんは、次のように語りました。
「ハイチの子どもたち自身、ひどい自然災害に遭ったり、極度の貧困に苦しんだりしているでしょうに・・・。その子どもたちからの気持ちを、是非、日本の子どもたちに伝えたいと思います」

ヌーベル・スルス初等・中等学校 日本の子どもへ手紙を書く生徒 書き終わった手紙を見せる生徒


(カルフール・レジデンシャル・ケア・センター)
(滞在型児童擁護センター)


「クール・ア・クール(心と心)」というヒップホップの10人グループが、日本で被災した子どもたち向けに作ったという歌を披露して、親善大使を歓迎しました。
「心を強く持とう!目に涙はためているし、必要なものはたくさんある。それは事実だが、心は強く持っている! ハイチ、チリ、日本、そのほかの国々も、災害に遭ってしまった、それは否定ができない。でも暮らしは続いていく・・・」


(ハイチ国立大学病院)

1995年にも訪れました。建物の大部分が被害を受け、小児科・栄養安定化病棟の復旧が急務ですが、まだ、一部テントが使用され、道半ばという感じで診療がなされていました。

黒柳さんの感想。
「両親のいない14歳の少年に会ったのですが、8歳くらいにしか見えませんでした」「その子に、地震は怖かった? と聞いたら、『ノー』と言うので、『揺れている間も?』と聞いてみたの。そうしたら、また『ノー』と言うんです。どうやら、あらゆる困難に遭っているから、ハイチの子どもたちは、地震くらいでは驚かないみたい」



【東北取材】

宮城県亘理郡亘理町
荒浜小学校(614名)津波で校舎は閉鎖され、同じ町の逢隅小学校に間借りして授業を行っています。
ここで、黒柳さんは、スライドを使いハイチの様子を報告し、ハイチの子どもたちから預かってきた手紙を渡しました。
山元町(亘理郡)中央公民館(避難所)
避難民の方から、津波の様子や今の生活、将来のことなどを聞きました。
避難者数(344人)6月15日現在

山元町の津波現場 ハイチの様子を伝える黒柳さん(荒浜小学校) ハイチの子どもからの手紙を渡す黒柳さん(荒浜小学校)



【感想集】

 

■加藤詔子さん

ハイチ・東北報告見せていただきました。
「大災害のなかにも子供の笑顔」
このタイトルそのままの、子供達の笑顔が輝いていましたね。
一年前、北海道の子供達からの励ましのメッセージがハイチの子供達に送られていたことも、初めて知りました。
そのお返しにと、日本の子供達に送る励ましのお手紙を書いてくれた子供達、
こんな優しい心を持った子供達の輪にとても胸をうたれました。
このような辛い経験をした子供達でも、明日という未来を諦めず見つめて生きているのだと子供達の逞しいエネルギーを画面から感じる事ができました。
優しい子供達を映してくれてありがとうございます。
私に出来る事、少しばかりの募金ですが、来週早々に行ってこようと思っております。


■守利虎彦さん

先ほどじっくりと見せてもらいました。震災番組がずっと続いていて 正直…でしたが 取り上げ方が新鮮で退屈せずに見せてもらいました。ユニセフにすこしだけ送金しておきます。


■白井緑さん

先月私の住む町に黒柳徹子さんが来たときの番組を視聴中。
その前にハイチの子供の現状に涙が出た。
ハイチは想像していたより酷い状態。復興が進んでいない 現状に衝撃をうけました。日本から発信された言葉にハイ チの子供が勇気を貰い、そしてまたハイチの子供から宮城 の子供へリレーされる思い。自分たちの置かれた過酷な状 況をうけいれてなお相手を思いやる強さと優しさを人間は 持ち得るんだと。復興支援は息を長く続けていかないといけないとも思いま した。
一度募金して満足してた自分の無関心が恥ずかしい。

 

■鴻池良夫さん

「ハイチ・東北」特番見させていただきました。
戦争や紛争・貧困そして天災による苦難。
国境を越えて、子供たちの純粋で相手を思いやるやさしい気持ちにふれ、直面する現状はあるにしてもこの番組を見た方をすがすがしい気持ちにさせてくれたと思います。
ハイチだけでなく、これまで訪れた被災地の根底には、権力者や為政者による人間の最悪で果てしない自我の横暴がその要因です。
結果、多くの国民や弱い幼い子供たちがその犠牲になります。
乏しい政治力は貧困、無教育等を生み、国の基礎を危うくし、将来を担う子供たちの夢(国の有形・無形の資質)さえ奪っていきます。
番組は貧困のなかでにありながらも、ハイチの子供たちの明るさ、優しさ、未来への夢を力強く伝えてくれました。
真に子供は未来の宝、人間・地球の宝です。
子供たちの日本へのエールの歌に中に「明日は必ず来る・・・、地球は一つ心は一つ・・・・・・」とあったように思います。
その心を大切にしたいと思います。
今回特に子供たちによる優しい心の手紙の交換がありました。
悲惨な惨状を知らしめることもさることながら、このような時にあっても、最も被害を被っている子供たちの明日への希望の芽をきちっと伝えることは重要な役割ではないかと思います。
ユニセフの役割とこの活動への協力の重要さが伝わる番組でした。
今回、特に体調の良くない黒柳さんが、現地を歩く後姿に彼女の使命感を強く感じました。


■新田邦博さん

黒柳さんの仕事の説得力に圧倒されました。どうしようもない絶望のなかでも生きていく、生きていかなくてはならない子供達の底力を見せ付けられました。ハイチの子供達が歌った歌の詞が良かったですね。より多くの人に見てもらいたく、再放送を望みます。

 

■佐々木聰さん

これまでにも黒柳さんが海外を歩く番組は、何度か見たことがありましたが、今回は見事に東北に繋げていました。
面白かったです。
22万人が亡くなっているハイチの姿は、目を覆うものがありました。
子どもたちの姿を細かく撮影していました。
信念を持った黒柳さんのしゃべりと重なると、じわじわと伝わってきました。
前回の映像(最貧の国)にも引き付けられました。
取材の厚みを感じました。
信念を持って活動をしているという、無言の信頼感にもつながります。
海外では国内とは違って、私は、なかなか思うように取材ができません。
この番組では、おそらく短いであろう現地での取材時間の中で、多くの子どもの姿と声、エピソードを細かく丁寧に拾い集めていました。
北海道からのメッセージは、胸が熱くなりました。
その返事を、日本の子どもたちが真剣に聞き入っている姿にも感動しました。思いがつながったと感じました。
いい番組でした。とても。
どこか何か指摘を・・・となると、なかなか難しいです。
唯一あるとすれば、歌を作ってプレゼントされたところでしょうか。
私がナレーションを聞き洩らしたのか、歌っている子どもたちが裕福に見えてしまいました。
その後、説明が何度も入るので、そうではないということは分かってくるのですが、もう少し最初の段階で説明があると歌のシーンも疑問なしに見られたかも知れません。
生意気なことを書いてすみませんでした。
心温まる、けれど考えさせられる番組を有難うございました。

 

■大空真由美さん

昨日の黒柳さんの番組、家族で拝見させていただきました。
心にしっとりと伝わってくるものがありました。
両親も私も、ところどころ、涙ぐんで見ていました。

ハイチは20歳未満の子どもたちが多いのですね。
家のない、家があっても貧しすぎて家に帰れないストレートチルドレンたちは、教育も受けられず、どんな大人になっていくのだろう・・と思うと胸が痛みました。それでも、一生懸命、生きていこうとしている子どもたちの姿勢に、大人も見習わなくちゃ、と思いました。
日本の被災した子どもたちのためにハイチの子どもたちが歌ってくれた歌も感動的でした。歌詞を訳さないと日本人にはわからないかもしれませんが、被災地の子どもたちにぜひ意味も含めて聞かせてあげたいですね。
番組の中では出てきませんでしたが、亘理の小学校で子どもたちに聞かせたのでしょうか?
販売して売り上げを被災地に寄付できたりするといいですね。
そして、日本とハイチの子どもたちを繋いだお手紙もとても素敵でした。
言葉は通じなくても、温かくてやさしい気持ちはきっと伝わっていると思います。
素敵な番組をありがとうございました。

 

■小林郁子さん

東北の製作は あまり時間がなかったのでは?と思っていましたが 内容が濃いもので じっくりと 見入ってしまいました。
震災直後から TVの取材がはいり 被災地の皆さんは 「それどころではない」状態だったでしょうに。いやな事もあったのではと思いました。
悲しみや苦しい状況の時に カメラや マイクを向けることは 視聴者優先でないのか・・
と感じながら 本当に そのありのままを多くの人々に伝えること 現場に入ることは デリケートな部分にふれることです。震災から4カ月 TVは今も被災地の人々にカメラを向けます。何か ストーリーが出来ているような内容も多く感じる事もあります。 巨大地震と津波 そして原発と 怖い体験をし 震災前の日常が取り戻せない皆さんのご心痛はいかほどかと 言葉になりません。 黒柳さんの不思議な優しさや力強さが 取材で会った子どもたちやその周りの人々に受け入れられ 皆さんにとってよい時間だった事を映像から感じました。今のハイチの現状 驚きました。世界からお金が集まってきても 政治がダメなのか・・と。手紙を書いてくれたハイチの子どもたち 歌を歌ってくれた子どもたち 日本人としてありがとうを伝えたいです。
数年後 ハイチはどうなっているのか 同じ大地震にあった日本人として 少しでも復興できるよう 願います。
また 今回のユニセフ報告の 再放送を期待します。
親子で、恋人と、大切な人と シングルでも、番組をみていない方に 見ていただきたい ユニセフ報告です。
素晴らしい番組をありがとうございました。

 

■YIさん

ハイチと東北被災地の取材お疲れ様でした。
ガレキの山や空洞となった建物がいつまでも片付かず、避難所や仮設住宅で暮らしたり、仕事を失ったりしている人達が大勢いるのを見るにつけ、総理退任だの大臣辞任だのとそんなことに余計な時間を使っている議員達に本当に腹がたちます。
日本の地震被害にばかり関心が移ってしまい、ハイチでも地震があったことなど忘れていた人が多かったと思います。私もその一人です。
田川さんの番組がきっかけとなって、東北以外にもまた関心を持つ人が増えるといいですね。
うちの会社でも、どこかで災害がある度に社員に義援金の募集をするので、私はその度に義援金を入れていましたが、東北地震の前は義援金を入れていたのは社内でも少数派でした。今回の東北地震では義援金を入れた人が急増したようです。
これをきっかけに日本でも他国への寄附や義援金の習慣が根付くといいですね。
ユニセフへの募金もしておきました。


表紙に戻る