コソボの悲劇その後
〜黒柳徹子リポート〜
10月3日(日曜日)ごご2時から放送(テレビ朝日系列)
【コソボ紛争のあらまし】
「コソボ」はユーゴスラビア共和国の自治州です。
人口180万人のうち、アルバニア人が90% セルビア人は10%に過ぎません。
ユーゴスラビアはセルビア人の国ですから、言語や生活習慣や宗教が違うアルバニア人に自治を認めて、自治州となっています。
旧ユーゴスラビアからは、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナなどの国が独立していきました。
アルバニア人も独立したいと考えても不思議ではありません。
彼等は、大統領を選び、国の樹立を宣言したりします。これは国連に認められませんでしたが、その機運は収まらず、独立を目指すゲリラ組織“KLA”が激しくセルビア政府と対立します。
セルビア政府はこの動きをに対抗して、自治権を剥奪し締めつけを始めます。
両者は収拾のつかない状態に突入します。
セルビアは軍隊と警察を持っています。
アルバニア人の大量虐殺、民家の焼き討ち、奪略など、非人道的な行為が始まりました。1998年の秋頃から、それは激しくなりました。1999年になてから、交渉による解決は無理、と判断したNATO は空爆を開始します。セルビア政府を弱体化させ、非人道的行為を止めさせるのが目的でした。
空爆は3ヶ月も続きました。
【現在のコソボ】
この間、コソボからは、セルビア人によって追い出されたアルバニア人85万人が国外に難民となって流出しました。
左の地図に表示した数の他に第三国にも流失しました。
これを民族浄化と呼んだ人もいます。アルバニア人を殺したり、国外に追放して、セルビア人だけの国にしようとする試みだ、と言われました。
空爆が終わった今、90%の難民が帰国しました。
しかし、彼等の家は壊され、学校の60%が破壊されています。
100万個の地雷が埋まっていて、特に子供たちが危険にさらされています。
今度は、残ったセルビア人が復讐され、殺されています。
電力供給は10%しか回復していません。
ボクらが泊まったホテルでは、水が出ませんでしたし、エレベーターも動きませんでした。
5万人の平和維持部隊が治安の維持にあたっています。
とても、自力では復興は出来ません。
沢山の援助が必要です。
破壊された小学校
コソボ市内
平和維持部隊が治安維持に当たっている
まだ帰還できない子供達が難民キャンプにいる(マケドニア)
夫も殺され家も焼かれて途方に暮れるアルバニア難民(マケドニア)
【未来へ】
子供たちが民族同士の憎しみを引き継ぎ拡大していくのをどうして食い止めるか、大きな問題です。
五歳のアルバニアの子供は、セルビア人がいかに残虐かという詩を読まされていました。もう少し大きな子は、セルビア人のガードマンの帽子を見つけ、セルビア!セルビア!と叫びながら、足で踏んづけていました。
教育以外に、この憎しみの再生産を食い止めるものはありません。
でないと、この憎しみは、何百年も何千年も続くでしょう。
入江恵子さん
今日、コソボのレポートをテレビで拝見しました。
やはり、今だからコソボ、とおっしゃっていたのは、確かにそうだと実感しました。
平和ボケしている私でも、さすがにまだコソボでの民族紛争とNATOの空爆は記憶にあり(でも、“新しく”と書くには、悲しいかな抵抗があるのですが…)今日のテレビの映像がとても身近なものに思えたほどです。
春先のニュースでは、海の向こうのことと思っていたことが、同じ人間が親を殺され、夫を殺され、住んでいた家を追われ…という他人事おは思えない悲劇にさらされていたのだと、大きなショックに変わりました。
タイムリーだったということ、人が人を殺すという(飢餓などとは違った)恐怖、憎しみが、次の世代にまた新たな憎しみを生みだしている悲しさ…私が拝見したこれまでの徹子さんのレポート中でも特に今回は印象的でした。
まだまだ安全とはいえない中でも取材だったことと思います。遅ればせながらお疲れさまでした。
コソボの地雷のこと、東海村の事故、トルコや台湾の地震…本当に21世紀に向かって、地球はどうなっていくのだろうと思わずにはいられません。