静かな緊急事態

黒柳徹子のモーリタニア報告
放送:1月18日(日曜)午後2時

この番組は、ユニセフ親善大使・黒柳徹子さんに同行した記録です。
黒柳徹子さんは97年11月19日から25日までモーリタニアに滞在し、首都のヌアクショット、南部のアレグ、ボーゲ地方を視察しました。

この国の全ての問題は“砂漠化”に集約されます。
この国の国土は日本の2.7倍ありながら、2/3が砂漠で、しかも年々7キロの早さで南下しています。

幹が埋もれてしまったナツメヤシ

国民の多くがアラブ系の遊牧民ですから、砂漠化にともない、遊牧が出来なくなり、村を捨てて都市に集中します。
都市はスラム化します。
陸の孤島になったティシット首都・ヌアクショット


フランスから独立した1960年当時は75%が遊牧民でしたが最近は10%しかいなくなりました。
首都の人口は当時5千人だったそうですが、現在は80万人が住むようになりました。

[子供達の現状]

全ての子供が栄養失調で、ビタミン不足で二歳になっても歩けない子供が沢山います。

原因は食物の不足と母親の知識不足です。
特に離乳時期に問題があるようです。
ユニセフは2年間授乳を続けるように指導していますが4、5ヶ月で離乳してしまうから栄養が不足します。
授乳を続ければ極めて妊娠しにくくなるため、多産を押さえる効果もあるのです。

平均6、7人の子供を生みます。
出産してから6ヶ月で次の子供を妊娠することもあるようです。

こんな迷信を信じる母親も多いといいます。
 1)バターを食べさせると体の中を洗い流して綺麗にする。
   その結果、酷い下痢を起こさせる。
 2)卵を食べさせると盗人になる。
   栄養価の高い食品であるにも関わらず卵を与えない。

ユニセフはこのような子供の状況を「静かな緊急事態」(Silent Emergency)と呼んでいます。
緊急事態ではないが、じわじわ子供たちを苦しめる状況を言い現したものです。

力がなくて自分で蠅を追い払えない二歳になるが、まだ歩けない

5歳未満児死亡率  1000人中195人(日本は6人)
乳児死亡率  1000人中112人(日本は4人)
平均余命  53歳

学校は義務教育ではない。
義務教育にすると受け入れ施設がない、というのが理由です。

コーラン学校


成人識字率38パーセント。

病気は
 急性呼吸器感染症(昼夜の温度差と砂埃)
 マラリア
 下痢(水が悪いため)
 眼病(砂漠の砂埃)
 耳の病気

[水の話]

この国の水は世界一高いといわれている。
安全な水を飲める人
 都市部39パーセント
 周辺部31パーセント


ユニセフは安全な水を供給するために、従来のように上水をためた井戸から手で汲み上げる方式を止めて、風車を使った水くみを始めた。
人間が水を扱うプロセスが減るから汚染が防げるからだ。
下痢の発症率は30%から15%に減少した。
価格も安くなった。

六十メートルある井戸はロバが引く


従来の手で汲む水は200リットル入りのドラム缶を100ウギア(80円)で買い、300ウギア(250円)で売ったが、風車の水は35ウギア(25円)で仕入れ80ウギア(60円)で売れるようになった。
これも、子供の仕事だ。一日に6缶から7缶売る。

この足踏み井戸は三千人が利用する首都には水道がないからロバで水を売り歩く
これも子供の仕事だ


足踏みの井戸は日本政府が提供した。(足踏み井戸120本、電動井戸60本)

[日本との関係]

この国の外貨獲得の資源は鉄鉱石と漁業である。
水揚げされた魚の半分近くを日本が買っている。
タコ、イカなどだ。
日本のタコの80パーセントはモーリタニア産。



スタッフ
撮  影:飯田 協子
V  E:高橋 真一
音  楽:森本 浩正
ナレーション 
スクリプト
:風小路 将伍
プロデューサー:田川 一郎