舞台チャンネル


「レティスとラベッジ」

 昨年の『マレーネ』で、もう、あの劇場でお目にかかることはあるまい、と思ってい ましたのに。なんと、うれしい、ありがたいこと。演劇の神様は、私たちに味方して くださいました。昨年の秋と同じように、私は、あの劇場で、また芝居を見ていただ けることになりました。「またカエル」ということで、弟が修学旅行のお土産にくれた小さなカエルを、ボンドでつけてきたことが効いたこともあるのかも知れません。 (どこにつけたかは秘密です) 昔からの言い伝えは確かなようです。  

 今回は、また帰る、ということもあり、「再び」ということで、前にやったもので 再演の希望が物凄く多かった『レティスとラベッジ』というのをやることにしまし た。といっても、嬉しいことに、私のやったもの全て再演の希望があるのですが。 これは、『アマデウス』などを書いたピーター・シェーファーの優れたもので、大喜劇です。「ピーター・シェーファーが黒柳さんをどこかで見ていて書いたのではないか?」といわれたほど、私にピッタリの役です。  

 レティスは、イギリスの古い建物を観光客の説明する仕事をしているんですけど、 つまらない建物、つまらないお決まりの説明。お客様も退屈なので、とうとう彼女 は、自分の好きにいろいろ歴史を加えて説明します。話がどんどん大袈裟になってい きます。そのかわり、お客様には大受けです。そのために、会社の上司に首になりま す。  

 この首にした人が、初演は山岡久乃さんでした。山岡さんはこの役が大好きで、病気が治ったら最初にやりましょう、と約束していたものでした。絶対に治る、と信じていた山岡さん自身、どんなに悔しかったことでしょう。 いまも、レインコート姿のさっそうとした山岡さんのロッテが目に浮かびます。でも、「ショウ・マスト・ゴー・オン」で、私は歯を食いしばってやることにしま した。今回は、『幸せの背くらべ』でご一緒だった、私の大好きな、高畑淳子さんです。あの方の喜劇は絶品です。いわゆる丁々発止の、アイディア一杯の二人のセリフ。ご期待下さい。  

 このところ、歯を食いしばる女性の役を続けてやりましたが、このレティスは、私と似ていて、食いしばるんですけど、すぐ忘れちゃう。面白い女性です。彼女なりに歴史にはすごく詳しいです。本当に、ここがまた笑って頂くところでも あります。弁護士役の加藤武さんは、もう、昔から大の仲良しの文学座の大先輩でもいらっしゃるので楽しみです。三十年くらい前に、紀伊国屋で一緒にやった『騒がし い子守歌』で、加藤さんは賞をお取りになりましたが、私と洒落た関係にあった男というか、ダンナさんだったかたです。  

 演出は、このところずーっと、私の出るものを演出してくださっている高橋昌也さ んです。私をセゾンに呼んでくださったのも高橋さんで、第一回の出演が、この『レ ティスとラベッジ』でした。演出は飯沢匡先生でしたが、高橋さんは芸術監督でしたから、すべてご存じでした。ですから安心しています。  

 長くなりました。また、あそこでお目にかかれると思うと、胸がいっぱいになります。あの沢山の終わらなかった『マレーネ』への拍手が、まだ劇場の中に残っている思いがしています。お待ちしていますね。この『レティスとラベッジ』はセゾンが出来た次の年の上演で、はじめてキャンセル待ちの列ができた、記念すべき芝居でもあ るのです。なるたけお早めにお申し込みいただければ、私も安心です。では、そのときに。

   2000年・夏     

  六歳から子供が少年兵にさせられている     
  内戦つづきのアフリカのリベリアに発つ日に!

 
黒柳徹子


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